歳時記

感情を口で説明してはならない

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「私は怒っているんだぞ」
 と、自分で言ったのではインパクトがない。
(あっ、怒ってるかも)
 と、相手が自分で推測してこそ、インパクトがある。
 なぜなら人間は、無意識に自分の「推測」を正当化しようとするからで、
(怒っている)
 と相手が推測すれば、それは相手にとって「怒っている」という事実になる。
 だから、インパクトがあるわけだ。
 このことは映画を観ていればわかる。
 役者が、感情をセリフで言ってしまったのでは、つまらないのだ。
「よし、オレが殺(や)やるぜ」
 と、主人公にセリフで言わせるのは陳腐で、黙ってドスを抱いて部屋から出て行かせることで、
(あっ、殺りに行くぞ!)
 と観客に推測させたほうがインパクトは、より強くなるというわけである。
 で、今日の稽古。
 試しに不機嫌な顔で道場に出てみた。
(あっ、館長の機嫌が悪いぞ)
 と子供たちが推測してヒビってくれれば、いつもよりマジメに稽古するのだはないか、という実験である。
 結果はどうか。
「館長、お腹でも痛いの?」
 小学2年の女の子が私の顔を見上げて言った。
「い、いや……」
 所詮、私は〝大根役者〟ということか。

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