歳時記

正論で説得する「正論バカ」

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 正論とは、「正しい」という意味である。
 ならば、「正論」をもってすれば人を説得できるか。
 答えはノーだ。
 相手が「正論」を受け入れるということは、自分の間違いを認めることになるからだ。
「そうか、わかった。わしが間違うとった」
 と、潔(いさぎよ)い人間は意外に少なく、「それが正論であるがゆえに相手は突っ張る」という皮肉なことになってしまうのである。
 だから、正論をもって人を説得するときは、
「いかに正論と思わせないようにするか」
 というレトリックがポイントになる。
 たとえば、こんな例はどうか。
 某和菓子屋さんで、若手のA君がインターネットを使ったPR展開を提言した。
「社長、いまどきホームページを持たないなんて、時代遅れです」
 A君が「正論」。
 だが、年老いた社長は、超ガンコ者。
「老舗は、老舗らしゅうやっとらええんや」
 と、聞く耳を持たない。
 なぜなら、
「せやな」
 とA君の主張を認めてしまえば、自分が時代遅れであると認めることになってしまうからだ。
 その心理を知らず、正論で攻めるのは腕力勝負。
〝北風〟でマントを脱がせようとするようなもので、攻めれば攻めるほど、
「そんなもん、銭ばっかりかかってからに、アカン!」
 逆効果になってしまうのである。
 A君は、こう提案すべきなのだ。
「菓子業界もインターネットの時代なんですかねぇ。老舗のQ本舗も、新興のZ商店も、つぶれかけたY菓子も、み~なホームページ。紙媒体のウチは少数派になってきましたが、逆を言えば希少価値ですね。こりゃ、目立つかもしれませんよ」
「正論」を振りかざさずして、正論を主張する。
 すると、ガンコ社長も、
(ウーム……。ウチだけ取り残されたらどないしょ)
 と軌道修正をし始める。
 これが人間心理なのである。
 社員の「正論」で上司が我が非を認めるのではなく、上司が自ら間違いに気づいて軌道修正する――こういう形に持っていくのが、「正論」を用いた正しい攻略法なのである。
 間違いに気づいてなお、
「地球は四角だ」
 と言い張る上司に、
「なに言うてまんねん。地球が丸いことくらいガキでも知ってまんがな」
 と正論で応じてはダメなのだ。
「じゃ、おまえ、証明してみろ」
「そんなムチャな。地球儀を見たらわかるやないですか」
「なぜ地球儀が正しいとわかる。証明してみろ」
 正論で押され、劣勢になれば、上司は泥仕合にもっていく。
 部下は、上司にこう問いかけるのだ。
「地球って、ホンマに四角なんやろか?」
 すると上司は、渡りに船で、軌道修正を始める。
「四角だとオレは聞いているが、確認したほうがいいな。ひょっとして、丸いということも考えられる」
 こうして上司を手のひらでころがすのだ。
 いや上司に限らず、亭主しかり、女房しかり、我が子しかり――。正論とハサミは使いようで〝切れ味〟が決まるのだ。

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