歳時記

横山ノックさんの死に思う

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 横山ノックさんが亡くなり、昨日、今日と、各局ともニュースやワイドショーで氏の半生を放送していた。
 周知のように、お笑いタレントから参議院議員、大阪府知事、そして2000年8月、女子大生に対する強制わいせつ罪により懲役1年6カ月(執行猶予3年)の判決を受けた。
 絶頂から奈落へ――。
「エロダコ」と呼ばれ、関係者はソッポを向き、メディアの大バッシングに芸能活動復帰はままならず、失意のうちに亡くなった。
 そのメディアが、こぞってノックさんの死を報じた。
 好意的だったと思う。
 
 ならば、あの大バッシングはいったい何だったのだろうか。
「死者をムチ打たず」というのはよくわかる。
 だが、それでも私は、何となく割り切れなさが残るのである。
 かつて、劇画作家の故梶原一騎先生が、暴力事件でメディアから大バッシングされたとき、私にこうおっしゃった。
「向谷君、世間は残酷なもんだぞ」
 世間の圧倒的支持で劇画作家の第一人者になり、一転、世間のバッシングでその座から引きずり下ろされたことを、残酷という言葉で梶原先生はおっしゃったのだ。
 世間とはいったい何だろうか。
「他人」は私にとって「世間」であり、「私」は他人にとって「世間」である。
 人生の厄介さは、そこにあるのではないだろうか。
 ノックさんの死を報じるテレビ番組を見ながら、ふとそんなことを思った。

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