5月6日から11日間、得度習礼で京都・西本願寺西山別院に入るため、いま原稿に追われていて、このブログも4日ぶりになってしまった。
昨年6月、奈良教区で得度考査を受け、11月から得度習礼の予定であったが、今回と同じように出発前の原稿に追われ、結果、過労で入院するハメになってしまった。加えて脊柱管狭窄症による膝痛が出て正座もできなくなり、今年5月に延期願いを出しての得度習礼である。
今回も、膝痛、腰痛に続いていて風邪をこじらせ、私の師匠である奈良・称名寺の伊藤智誠氏もたいへん心配してくださっているが、何とか得度したいと念じている。(なぜ坊主を志したのか、得度はどうであったか等については、日を改めて書き起こしたい)。
今日――日曜日の午後、遅い昼食を摂っていると、テレビでゴルフ中継をやっていた。
私はいまはやらないが、20代のころはゴルフに凝った。
空手をやっているから、何事も基本が大事であることを痛感しているため、ゴルフを始めるに際して、打ちっ放しの練習場を選んで、レッスンプロについてグリップから手ほどきを受けた。
レッスンプロは、リー・トレビノに風貌が似た30代の男性で、何くれとなく世話を焼いてくれ、彼が休日の日は、よく河川敷コースへ連れて行ってくれた。河川敷でのレッスン初日、謝礼を封筒に入れて渡そうとしたが、「いいよ」とニッコリ笑って受け取ってはもらえなかった。以後、1度も払ったことはない。昼食のとき、漬け物が好物だと彼が言っていたので、お礼にどっさりと漬け物を送ったことを覚えている。
その彼が、レッスンの最中、私にこう言ったことがある。
「スィングは、クラブを上げたら下ろす――これでいいんだ。余計なこと考えるからだめんなんだ」
バックスィングしたら、トップからそのまま無心で振り下ろせばいいと言うのだ。
なるほど、と思った。
(ゴルフだけでなく、仕事も人間関係も何かも、余計なことを考えないで、上げたら下ろす――でいいのではないか)
そう思った。
そう思ったら、生き方が少し楽になった。
レッスンを受け始めて1年ほど経ってからのことだったろうか。
いつものように練習場に行くと、彼が待ち受けていて、「実は事情があって、ゴルフから足を洗うことにしたんだ。頑張ってね」と言った。
どういう会話をしたのか記憶が抜け落ちている。
彼は笑っていたけれど、淋しそうな顔をしていたような記憶が、かすかだが残っている。
彼の名前は覚えていない。
顔はしっかり覚えている。
そして、「上げたら下ろす」という言葉は、この30年間、私の頭から消えることはなかった。
「上げたら下ろせ」――30年間、忘れ得ぬ言葉
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