歳時記

愚妻の「罪つくり」

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怒濤の法務が終わり、やっとひと息。
愚妻を日帰り温泉に送迎するのも一週間ぶり。
今日は長湯をするとかで迎えは12時だから、温泉滞在は実に4時間である。

私は『マック』に行って原稿を追い込むつもりでいたが、資料の関係で自室に籠もっている。
同じ「籠もる」でも、ノンキに湯船に浸かるのとはえらい違いである。

ノンキと言えば昨日のことだ。
導師控室にいると、スマホが鳴った。
愚妻からである。

これから葬儀が始まることを知っているはずなので、電話をかけてくるには余程の急用だろう。

すぐに出る
「もしもし」と何度も呼びかけるが応当なし。
聞こえるのはテレビの音声ばかりである。

(これはひょっとして倒れたか?)

以前、愚妻は自宅の二階を片付けていてハンガー吊りが倒れ、下敷きになって身動き取れなくなったことがある。
愚妻はたまたまスマホを持っていたので、階下の私にSOS。
救出したことがある。

そのときのことがよぎる。
脳卒中とか心筋梗塞で倒れたとしたら一刻の猶予もならない。

だが、まもなく葬儀が始まる。
ヤバイ。
どうするか。

いったん電話を切り、LINEで掛け直してみると、
「なあに?」
ノンキな声。

「電話をかけただろう。どうかしたのか?」
「電話? あら、スマホの操作を間違えたみたい」

愚かな女である。
LINEが通じたからいいようなものの、そうでなければどうなったか。
人騒がせにもほどがあろう。

帰宅してこんこんと説教したが、
「しょうがないでしょう。間違ったんだから」
反省の色は皆無なのである。

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