四日ほど法務をこなし、とりあえず残すのはあと土、日。
これが終われば、すぐに再校ゲラの直しに取りかからなければならない。
そんなことで、今日は気分転換に夕刻から久しぶりにウォーキングに出かけたところが、
(あっ!)
と驚いた。
見渡す限り田圃が広がっているのだが、稲が短くなっているではないか。
どうしたことかと目を凝らすと、なんと稔った稲が頭(こうべ)を垂れているのである。
短くなるはずだ。
『稔るほど、頭を垂れる稲穂かな』
とは、うまいことを言ったものだが、私はつい、
(叱られてうなだれているみたいだな)
と思ってしまう。
やぶにらみするのは物書きの習性か、私の性格によるものか。
たぶん両方なのだろう。
帰宅して稲穂のことを愚妻に話して聞かせると、
「あなたと真反対ね。歳を取るほど頭を上げる偏屈かな、でしょ」
口を開けば嫌味を言うのだ。
「バカ者、わしは頭を上げているんじゃない、肩をそびやかしておるのだ」
「もっと悪いじゃないの」
「おまえのような女にはわかるまいが、この世知辛い世のなか、頭なんか垂れていたら踏みつけられてしまうのだ」
思わず僧侶らしくない言葉が口をつく今夕のウォーキングである。