スーパーの「冷凍ワンプレート弁当」が人気なのだそうだ。
ニュースでやっていた。
値段も安く、量が少ないのがよい。
これなら弁当に好きな副食を加える楽しみがあるではないか。
いま配達をお願いしている宅配弁当は品数も量も多く、食べきれず、心理的負担になっているのだ。
さっそく近隣のスーパーに電話で問い合わせる。
問い合わせはいつも愚妻の役目だが、気合いが入る私が今回は自分でした。
「はっ? ワンプレートの冷凍弁当ですかァ?」
お惣菜売り場の男性担当者がノンキな応対。
「いま、お宅のオリジナル商品とかで、ニュースで話題になっているじゃないですか」
「そうですかァ。冷凍弁当はいくつ置いてありますがねぇ」
イラ、である。
「おまえのところのオリジナルだぞ! それで仕事が務まるのか!」
怒鳴りたいところが、いま問題になっている「カスハラ」の四文字が頭をよぎり、グッと我慢。
私は仕事において、プロ意識の希薄な人間は腹立たしくなるのだが、時節がら、おとなしく電話を切った。
ならばというので、遠方の大ショッピングモールに出かけてみたのだが、カフェの前を通りす過ぎるとき、美味しそうなパフェのポスターが貼ってあるのに気がついた。
「食べるぞ」
愚妻に告げ、カウンターで私が自分で注文する。
「そこのポスターのやつを二つ」
商品名がカタカナの長ったらしいやつなので、ポスターを指さしてそう言うと、若いネエちゃんが早口で商品を復唱する。
「ナヌ?」
早口すぎて、何を言っているかわからないのだが、ネエちゃんは耳が遠い年寄りだと思ったのだろう。
「スムージーのほうでいいんですか?」
大声で言った。
「スムージーって、なに?」
するとネエちゃんはイラ立った口調で、
「食べるやつですか、飲むやつですか?」
カチン、きた。
「なんだ、その言い方は!」
これまでの私なら一喝するところだが、このときも「カスハラ」の四文字がよぎる。
スキンヘッドの爺さんと若い女性店員となれば、構図としては典型的な「カスハラ」に周囲は見えるだろう。
トラブれば、あとで愚妻が怒る。
ぐっとガマンして、
「食べるやつ」
で、渡されたのがパン。
私はパフェが食べたかったのだ。
パフェは呑むのではなく、食べるものだろうが。
だからそう言ったのだ。
「わしは二度とこのショッピングモールには来ないぞ!」
ネエちゃんに言うわけにはいかないので、憤然と愚妻に告げたのである。
「カスハラ」はもちろん問題だ。
だが、そうした社会風潮と人手不足に乗っかって、プロ意識の欠如した人間が目につくようになった気がする。
過剰なサービスは必要ないが、「やさしさ」を忘れていいはずがあるまい。
愚妻があとであきれていたが、現実に「スムージー」を知らない年寄りもいるのだ。