歳時記

マザー牧場である

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週明けは雨だと思っていたが、何と昨日は晴天ではないか。

朝起きるやいなや、
「9時出発だ!」

いきなり愚妻に命じた。

「どこへ行くのよ?」
「マザー牧場だ。帰りに鴨川に寄ってメシを食う」
咄嗟に答えた。

なぜマザー牧場なのか私にもわからないが、そう口をついて出ていた。

どこへ行くにせよ、連休明けの平日だ。
空いているだろう。

で、マザー牧場へ行った。

私は気がつかなかったが、愚妻によれば40年ぶりだそうだ。
言われてみれば、都内に住んでいたころ、子供をつれてよく行った記憶がある。
あれから40年とは、私も歳を取るはずである。

風が冷たかったが、いい天気。
カビパラだのヒツジだの動物とふれあえる。
一面に花も咲いている。

「ちょっと、膝が痛いわ」

うろうろ歩きまわる背後から愚妻が言う。

「歳か?」
「違うわよ、放射線の副作用よ」
「胸や鎖骨あたりに放射線を当てて、なぜ膝が痛むのだ」
「知らないわよ、そういうこともあるって注意書きに書いてあったんだから」

真偽のほどは定かではないが、そう言い張る。
「では、鴨川に行くか」
「ちょっと待って、何か買っていくから」

スタコラさっさとお土産棟へ向かって歩き出した。
ホンマに膝が痛いのか訝(いぶか)ったが、指摘するとムクれるだろうから黙っていた。

帰途は山を下って鴨川市に寄る。
十数年前、海が一望できるリゾートマンションを借りて仕事部屋にしていたのだが、小湊の手前に刺身のうまい店があって、ちょくちょく行っていた。

店は当然ながら代替わりしたようだ。
昔の面影はあったが、改装してある。

『すべてのものは移りゆく。怠(おこた)らずつとめよ』

お釈迦さんが亡くなるとき、最期の説法で語った言葉だ。

『すべてのものは移りゆく』には納得しつつ、『怠らずつとめよ』となると、さてどうか。

『すべてのものは移りゆく。ノンキに一日を過ごせ』

忙(せわ)しないデジタル時代の生き方は、こうあるべきだと、お釈迦さんに逆らってみたくなる一日だった。

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