昨日は法事で、三軒をお訪ねした。
そのうち一軒は本日の予定だったが、北上する台風がひどくなる前にということで施主と話をし、昨日に変更した。
で、昨朝。
雨が急激に降ったり、上がったり。
(早めに出かけてご近所で待機し、小降りのタイミングでお訪ねするか)
そんなことを思いながら、仏間であぐらをかいたまま、ひょいと左手を伸ばしたところが、
「痛テテテテ」
年に何度か襲ってくる左腰の痛みである。
たとえていえば、ギックリ腰のような痛みで、その場を動けなくなるのだ。
これから三軒の法事である。
(マズイ、実にマズイ)
何とか動けるようになるのを待って、愚妻に何枚も湿布(と言うのかどうか、頸椎症で処方されたもの)を背中と脇腹にペタペタ貼り付ける。
愚妻は先日から抗ガン剤の副作用が出始め、全身の関節が痛いとかで、処方された鎮痛剤を服用している。
まさに、我が家は時流に乗って「老々介護」である。
湿布を貼ると、白衣をマジックテープの白帯で留め、その上から腰のサポーターを巻く。
さらに布袍(黒い衣)を着ると、その上から20センチ幅の腰用コルセットを巻きつける。
完全武装で、そろりと運転して出かけた。
で、一軒目。
痛みをこらえ、読経と短めの法話を終え、クルマに乗ってシートベルトをしようとして、
(ありゃ!)
衣の上から巻きつけたコルセットを外すのを忘れ、そのままお勤めをしていたことに気がついた。
施主も参列者も雑談中、何もおっしゃらなかったが、
(この坊さん、腰が悪いんだな)
そう思ったことだろう。
そんなこんなで先程、頸椎症でかかっている整形外科をウェブで予約した。
実は先日、左腰に年に何度か痛みが出ることを主治医に伝え、レントゲンを撮ってもらったのだが、
「ずいぶん奇麗な背骨ですねぇ」
ホメられてすっかり気分を良くしていたのだが、よくよく考えてみると、痛むのは腰(骨)ではなく、筋か筋肉なのだ。
「腰が痛い」
という私の伝え方がまずかったのだろう。
レントゲンでは出ないはすである。
それで明日、診察を予約した次第。
本日から明日にかけて台風が来るようだ。
「物が飛ぶと危ないので、庭や家のまわりを見ておけ」
愚妻に命じると、
「ちょっと! 乳ガンの私にそんなことさせるの!」
乳ガンであることを、すっかり忘れていた。
私は、人並みに心配はするが、それが持続しないのだ。
これは嬉しいこと、楽しいこともそうだ。
すぐに忘れてしまう。
デジタル式なのである。
これは性格なのだから、どうしようもない。
「おい、わしはすぐに忘れるから、『妻は乳ガン』と書いて部屋に貼っておけ」
「怒るわよ!」
愚妻がニラみつける。
怒りは生命力を強くするのではないか。
私が先程、思ったことである。