コロナ禍は「生活様式」のみならず、「人生観」まで変えたのだそうだ。
識者やコメンテーターが書いたりしゃべったりしているので、
「おまえ、何か変わったか?」
愚妻に問うと、
「全然」
きわめてシンプルな言葉が返ってきた。
愚妻はそうと意識していないだろうが、これは正しいのだ。
10年前の東日本大震災を思い返せば、すぐにわかる。
津波の衝撃はさすがに凄まじく、日本人の意識を大きく揺さぶった。
「価値観が変化した」
「人生観が変わった」
「人や地域といった身近なものとのつながりを大事にしたい」
こうした言葉にウソはなかったろう。
で、10年がたって、私たちの何がどう変わったのか。
愚妻が言うとおり、「全然」である。
私がいつも書くように、「歴史に学ぶ」とは、
「人間は結局、何も変わらないということを歴史に学ぶ」
ということであり、
「歴史はくり返す」
とは、
「また同じことをやりまっせ」
ということなのである。
『兵戈無用』(ひょうがむよう)
とは釈迦の言葉で、
「武器も軍隊もいらない」
という意味で、釈迦の時代は言うの及ばず、太古の昔から現代に至るまで戦争が絶えないということを図らずも示している。
このことを歴史に学べば、
「また同じことをやりまっせ」
ということになる。
「だから仕方がない」
というのではない。
人間のこの本質をしかと肝に銘じることが、すべての出発点だと私は考えるのだ。
このあたり、浄土真宗的な思考ではあるが、考えようによっては極めてラディカルなのである。
「新しい生活様式」も結構だが、これがいつまで続くのか。
単なる言葉遊びのような気が、私はするのだ。