法衣や袈裟、襦袢など、法務関係の準備は愚妻がしてカバンに詰める。
だから私は、通夜、葬儀、法事と法務の内容を告げるだけでよい。
ご自宅にお伺いするときは、言わなくても携帯用の焼香炉をクルマのトランクに入れておいてくれる。
運転中に舐める飴を数種類と、飲み物も運転席の脇に用意してある。
雨が降りそうであれば、傘はもちろん雨コート、雨用の雪駄も後部座席に積み込んでくれる。
天気と気温に応じて下着一式も駕籠に入れて用意してくれているので、私はそれを着て、
「では、行ってまいる」
と告げて出かける。
そして帰宅すれば、廊下ですべてを脱ぎ捨てると、愚妻が法衣はハンガーに掛けて干し、白衣、襦袢、下着はすぐに洗濯する。
だが、考えてみれば、愚妻に先立たれると法務の準備ができなくなってしまうではないか。
これはまずい。
法務の準備はできても、洗濯など絶対にできるわけがない。
それで昨日、ご葬儀から帰宅して愚妻に言った。
「おい、もうしばらくは元気で生きておいてくれよ」
私は感謝の意を込めて言ったのに、なぜか愚妻はプリプリと怒るのである。