歳時記

夫婦喧嘩

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私は大の寒がりである。
日帰り温泉の食堂で仕事をしていると、冷房が効きすぎて寒くてたまらない。
他の客は薄着で平気な顔をしているから、私だけなのだろう。

だが、寒いものは寒い。
そこで冬用の厚手のフリースを店で探し出して購入、持参して着ている。
もちろん長ズボンに靴下である。

愚妻が額に汗を光らせながら風呂からあがってくると、
「ちょっと、そんなもの着込んじゃって、ヘンな人みたいに見えるわよ」
眉間にシワを寄せて言う。

「寒いものは寒い」
「あなただけでしょ」
「他の連中がおかしいのだ」

これが夫婦喧嘩の前半戦。

後半戦は、温泉施設から出て駐車場のクルマに乗り込んだとき。
これが私の至福のひと時。
炎天下の車内は暑くて暑くて、寒さに震えていた私は生き返った気分で、当然、エアコンは入れず、暑さを心ゆくまで堪能するのだが、これが愚妻には気に入らない。

「ちょっと、早くエアコンを入れてよ!」
車内に入らず、顔をしかめる。

「バカ者、この暑くていいい気分がわからんのか」
「ごちゃごちゃ言ってないで、エアコン入れなさいよ!」

毎朝、日帰り温泉で性懲りもなく繰り返す夫婦喧嘩なのである。

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