歳時記

足の裏を揉む

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「サウナに入ったら足の裏を揉むのよ」
と、愚妻がうるさく言う。

日帰り温泉に着くと「揉むのよ」と言い、帰るときは「揉んだ?」と訊いてくる。

「揉むわけがない」
不機嫌な声で言うと、
「だからダメなのよ」
愚妻は顔をしかめるのだ。

足の裏を揉むのは健康にいいことは、私も知っている。
知っているから揉まないのだ。
健康志向はいいとしても、それを他人に見せるのは人前で化粧する女と同じで、カッコ悪い。
粋じゃないのだ。

もし私がそんな姿を見たら、
(そうまでして長生きしたいのか)
と鼻で笑うだろう。

「女のおまえにはわかるまい」
たしなめると、
「じゃ、病気になっても私に世話をかけないでよ」
論理は一気に飛躍し、プリプリしながら家路につく。

男の矜恃は、女子供には理解できないのだ。

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