歳時記

蚊(か)が飛んできて「因縁」を考える

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 自室のベッドに寝ころがって本を読んでいたら、「ブ〜ン」と嫌な音。
 蚊(か)である。
 残暑のせいで、まだ元気なようだ。
「ブ〜ン」の音がひときわ大きくなったので、耳のそばをかすめているということか。
 不意に「ブ〜ン」が聞こえなくなった。
(ほっぺたに着陸!)
 というので、頬をパチンと打ったところが、蚊は当たらず、メガネのツルが曲がってしまった。
(あの蚊さえいなければ)
 と腹立たしくなったが、
(待てよ)
 と思い直した。
 悪いのは蚊だろうか?
 叩いた私がヘマをやったのだ。
 いや、そもそも寝転がって本を読んでいたことに原因があるのだ。
 いや、待てよ。
 そもそも、この本さえ買わなければ、読みはしなかったではないか。
 違うな。
 残暑さえ厳しくなければ、蚊はすでにいなかったかもしれない。
 こう考えていくと、メガネのツルが曲がった「原因」がわからなくなっていくのである。
 森羅万象は「因縁」に依ると仏教は教えるが、因縁の糸は無数に織りなしていて、因果関係はあってなきがごとし。
 まして人生における「因果」など、わかるわけがない。
 しかるに私たちは、因果関係を解き明かし、「犯人探し」をする。
 うまくいくわけがないのだ。

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