歳時記

減量の敵

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 WBC世界フライ級の比嘉大吾選手が計量に失格して王座を剥奪され、さらにKO負けを期した。
 減量しても汗も出ないというから、絞りに絞った上での減量失敗なのだろう。
 メディアはほとんどが批難の論調で、気の毒だが、プロとしては甘受するしかあるまい。
 再起を期待したい。
 比嘉選手のことが気になったのは、ほかでもない。
 私も今朝から減量を始めたからだ。
 ベスト体重は65キロだが、69キロになってしまった。
 65キロから70キロの間で、いつも体重が上下しているので、69キロになったからといって気にはならない。
 だが、ここで歯止めをかけ、減量しておかなくては、70キロの大台に乗れば、あとはズルズルと行ってしまう。
 それで一念発起した次第。
 ついでに行っておくと、ジーンズを買いに行って、股上の浅さが気になり、これは下腹が出ているせいだとわかったことも一因である。
 さっそく愚妻に減量を宣言する。
「どうぞ」
 と、そっけない割りには、今夕、食事をドカーンと出してきた。
「肉はいらん」
「鳥の胸肉なのよ。身体にいいんだから食べなさいよ」
 しょうがないから食べる。
 生野菜も、おひたしも山盛り。
 しょうがないから食べる。
 卵焼きも出た。
 しょうがないから食べる。
 冷や奴も一丁だ。
 しょうがないから食べる。
 
 今日に限って、味噌汁は具だくさん。
 ご飯も山盛りである。
 ラッキョだの、ふりかけだのと、何やかやを出してくる。
 減量の二文字を頭に浮かべがら、いつもよりたくさん噛んで食べ、食べ終わったところで、
「イチゴ、食べるでしょう?」
 イチゴを食べ終わると、
「チーズケーキ、食べるでしょう?」
 これは愛情なのか、それとも私の減量を阻止し、自分と同じ体形を維持させようとする無意識の行為なのか。
 減量の敵は、自分の意志だけではないのだ。

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