歳時記

ブドウと皮

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 明日、月曜の祭日は、空手の市民大会である。
 夜は招待審判員を交えた懇親会があるので、丸一日の長丁場になる。
 本部席に座っているだけで、表彰のとき以外は何もしないのだが、何もしないというのは、実に疲れるのだ。
 懇親会も、酒を飲まない人間には時間が長い。
 主催者側としては途中で帰るわけにもいかず、最後まで残っていなければならない。
 楽ではないのだ。
 忙しいので、なるべく予定を入れないようにしているのだが、
「予定を入れまい」
 とすると、どんどん予定が入ってくる。
「現実」は常に「思い」を裏切るようにできているということか。
 夜、湯船に浸かっていたら、にわかにブドウが食べたくなった。
 愚妻を呼びつけ、持ってくるように告げると、
「あら、珍しいわね」
 と言う。
 ブドウは食べるのが面倒なので、私が敬遠しているからだ。
「ちゃんと、皮を剥いて持ってくるのだぞ」
 そう厳命し、風呂場に持ってこさせたが、皮を剥いたブドウは、殻を剥いて出されたゆで卵のようで、簡便すぎて物足りない。
 愚妻に文句を言うと、皮ごと食べられるブドウがあるので、今日はそれを買ってくるという。
 愚かである。
「皮を剥かないブドウは、ブドウではない」
 叱責すると、
「じゃ、食べなきゃいいでしょ! 皮があると面倒だとか、なければ物足りないだとか勝手なことばかり言って!」
 ブチ切れた。
 ブドウを食べるのも、これでなかなか難しいのだ。

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