歳時記

凡僧の一経

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 昨日は、某市の地域包括センターの依頼で、ボランティア読経に出かけた。
 狭いアパートの一室。
 小さな卓袱台に、骨壺が置かれている。
 ご主人が亡くなられて一ヶ月。
 奥さんの退院を待っての法要である。
 奥さんは高齢で、独居とのこと。
 少し認知症が出始めたとセンターの担当者がおっしゃっていたが、明るい人で、楽しく世間話をする。
 持参した携帯用のご本尊、焼香台、お鈴をセットして読経を始める。
 クーラーも扇風機もなく、汗がじわりと吹き出し、やがてスキンヘッドを伝わって読経の口に入ってくる。
 衣の下に長襦袢(白衣)、襦袢、下着、それにステテコ。
 重装備は暑いですな。
 夕刻、センターの方からメール。
 奥さんが、あとで涙を流して、喜んでくださっとのこと。
 つたない読経でも役に立つのがあるということか。
 私は教説をふりかざすほどの学識もなく、これからの仏教を考えるほどマジメでもない。
 所詮、わがままな極楽トンボだが、人生の成り行きで僧籍の末席を汚している。
 残りの人生は少ない。
 じっとしているわけにはいくまいが、経験も能力も乏しく、私にできることは限られている。
 叶うことなら、「貧者の一灯」ならぬ「凡僧の一経」でありたいと願うのだ。

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