歳時記

久しぶりの畑である

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 今週は、ついに畑に出かけた。
「耕しておかないと、ジャガイモを植えられなくなるわよ!」
 と、愚妻に脅されたからだ。
 他の野菜ならともかく、ジャガイモは私の大好物。
 這ってでも行かねばならない。
 畑へ着くと、ネコ(一輪車)で堆肥を運ぶ。
 畑と畑のあいだをぬうようにして、エッチラオッチラと細い坂道を登っていくのだ。
 楽じゃない。
 5往復もすれば汗びっしょり。
 Tシャツ一枚になる。
「今週は真冬がもどってまいりました」
 と、テレビで天気予報のネエちゃんが言っていたが、私は一足飛びに真夏の気分である。
 堆肥を入れ、石灰を撒き、鍬(くわ)で50坪を耕した。
 といっても、私のことだ。
 丁寧なのは最初だけで、次第に雑になっていって、後半はテキトーである。
「マネごとでも耕さないよりはいいだろう」
 というのが、私の人生観なのである。
 そして、昨日。
 埼玉県の久喜市に所用があり、クルマで出かけた。
 東北自動車道の蓮田サービスエリアに寄ってひと息入れつつ、クルマのテレビをつけると、家庭菜園の番組をやっていた。
 畑を耕した先日の苦役を思い浮かべながら観ていると、番組の指南役が念押しするように、こう言ったではないか。
「いいですか、ジャガイモの場合は、堆肥を混ぜて畑を耕す必要はありませんよ。種イモと種イモの間に堆肥を置いていくんです」
 耕す必要がない!
 Tシャツ一枚になって畑を耕した私の苦労は、いったい何だったのだ。
 ガク然としつつ、すぐさま携帯で愚妻に電話。
「おい、ジャガイモはな、堆肥と土を・・・」
「混ぜないんですってね。いまテレビで観ているけど」
 アッケラカンと言い放ってから、
「もう耕しちゃったんだから、いまさらしょうがないじゃないの」
 確かにそうだ。
 汗を流した私がバカだったのだ。
 「愚直な人間はいつも貧乏クジを引かされる」
 という人生の真理は、畑でも立派に通用するのだ。

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