歳時記

駄犬「マック爺さん」の抜歯

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 わが家の駄犬、「マック爺さん」が昨日、歯を抜いた。
 口を閉じたとき、下の歯の一本が上の歯茎を突き破るのだそうだ。
 私は興味がないので、愚妻の説明を聞き流していたが、
「全身麻酔なので、手術の成否は五分五分」
 という一言だけは、よく聞こえた。
「そうか、ついに死ぬのか!」
「ヘンなこと言わないでよ」
「バカ者。生(しょう)あるもの、死に帰するは世の習いである」
「死ぬと決まったわけじゃないわよ」
「生きると決まったわけでもあるまい」
「どうしても殺したいの!」
 説法するつもりでいたら、険悪な雰囲気になってきた。
 まったくもって、仏法に縁なき人間は度しがたいものである。
 結局、マック爺さんは生き延びた。
 確か15歳だと思うが、心臓も何かもかも、「年齢にしては健康そのもの」と獣医が言ったそうだ。
 会ったことはないが、きっとサービス精神の旺盛な獣医なのだろう。
 お陰で、愚妻は今日も上機嫌である。

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