歳時記

金環食を見忘れる

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 金環食を見ることはできなかった。
 と言うより、前夜、あれほど気合いを入れていたのに、金環食のことをコロリと忘れていたのだ。
 で、朝7時、のんびりと風呂に浸かってから出てみると、
「雲っていて、見えなかったわよ」
 と愚妻。
「何が見えないのだ」
「金環食」
「あッ!」
 と思い出したが、雲って見えないとなれば、結果オーライか。
 しかし、ここでふと疑念。
 愚妻はなぜ、
「風呂はあとにして金環食を見たら?」
 と私に注意を喚起しなかったのだろうか。
 思うに〝金環食グラス〟が一つ。
 自分だけが見ようとしたのではないか。
「おい」
「なによ」
「何でもない」
 問いただそうとして、やめた。
 夫婦は所詮、キツネとタヌキなのだ。
 

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