「ちょっと、おかしくなったんじゃないの?」
愚妻が眉をひそめる。
最近、独り言が多くなったと言うのだ。
言われてみれば、そうかもしれない。
で、よくよく考えてみると、原因は昨夏にあることがわかった。
仏教を勉強するときに、文章を目で見て、声に出して、書いておぼえるようにしたのだが、どうせやるならと思い、暗記すべきことがらを道場のホワイトボードに書きつけ、〝架空の生徒〟を前に、授業をするようにして勉強したのである。
「エー、信心とはだねェ」
ひとりでしゃべりながらホワイトボードに書きつけ、説明していくのである。
やってみると、すぐにおぼえられるし、これが気分がいいのだ。
それが、知らず知らずのうちにクセになったのだ。
「さあて、ジャガイモは2月半ばだな。おっ、その前に畑を耕さなければ」
と、無意識に口に出して言う。
「ちょっと、それ、私に言っているの?」
「何のことだ?」
「いま、ジャガイモがどうのって、ブツブツ言っていたじゃないの」
「そうかな」
そして、愚妻は冒頭のセリフ、
「ちょっと、おかしくなったんじゃないの」
と眉をひそめるのである。
だが、その表情は、私のことを心配してくれているのではない。
「おかしくなると、私が迷惑するから」
と、顔に書いてあるのだ。
私の独り言は、はからずも愚妻のホンネを引き出したのである。
最近、独り言が多くなった
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