歳時記

人生、なんだっていいのだ

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 土曜日から九十九里海岸の仕事部屋にいる。
 といっても二泊三日。
 明日は帰る。
 クルマで一時間だから、ちょくちょく来ればよさそうなものだが、私は一人では何もできないので、愚妻の都合次第ということになる。
 温泉健康ランドにつかってから、仕事部屋の近くにある店で、冷たい生ビールをキュッ。
 うまい刺身をたらふく食って冷酒をグヒグビ、というのは愚妻だけ。
 酒を飲まない私は定食を食べ、味噌汁をズズズーとすするのである。
 部屋にもどれば、愚妻は大あくびしながらテレビ。
 私はパソコンに向かって、必死でキィーボードを叩くのだ。
 そういえば、昨日は風呂にも入れなかった。
「こんな人生でいいのだろうか」
 思わずつぶやくと、
「いいに決まってるでしょ」
 襖越しに、隣室から愚妻の怒声が響いてきた。
「なんでだ?」
「理由なんかないわよ」
 あくび混じりの大声で返ってくる。
 そうか、こんな人生でよかったのか。
 何がよかったのかわからないが、
「これでいいのだ」
 と思えば、なるほどすべてはハッピーになる。
 考えてはならない。
 太陽は東から昇って西へ沈む。
「なぜ」
 と問うのは愚かなこと。
「そういうことになっている」
 と思えばいいのだ。
 私は愚妻の面倒くさそうな返事に「人生の真理」を読み取ったのである。
 明日は午後一時から都内で打ち合わせだ。
 早めに帰宅して用意をしなければ。
「おい、着物は何にしようか」
「何だっていいでしょ」
 そうか、何だっていいのか。
 私は次第に人生へのこだわりが希薄になっていく自分を意識するのである。

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