これまで保護観察処分になった青少年を担当してきて、ひとつ気づいたことがある。
彼らの多くは「人生に対する欲」が希薄なのだ。
金を稼ぐ、出世する、あるいは幸せな家庭を築く、といった「人生の欲」が希薄であるため、人生を逆算して、
「将来、そうあるために、自分はいま何をなすべきか」
という視点を持てないでいる。
だから、
「なんか、いいことないかなァ」
「かったるいなァ」
という日々となり、そんな仲間が集まれば、自然に非行の道に入っていくことになる。
となれば、彼らが人生に対して「欲」を持つことで、非行から立ち直れるのではないか、と考え、これまで保護観察対象者に接してきた。
だが、よくよく考えてみると、犯罪の多くは「欲」が根底にあるではないか。
窃盗、強盗、詐欺、経済犯など、みんな「欲」が動機である。
となれば、「欲」を持てば非行から立ち直るという考えは浅薄で、短絡に過ぎるということになる。
では、非行に走った青少年に対して、何を諭(さと)せばいいのか。
さんざん悩んだすえに、結論は、
「自分の人生にどう向き合うか」
この視点を彼らが持つように働きかけることではないか、と考えたのである。
だが、言うは易く、行いはなんとやら。
私自身が、還暦を前にしながら人生に確信を持てないでいるというのに、青少年に何を説けるというのか。
自問自答はエンドレスで続き、保護司という役割の難しさを改めて感じるのである。
非行青少年と「欲」
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