国も推奨するエコ対策の「マイバック」が万引きに悪用され、スーパーが頭を抱えているそうだ。
これまでスーパーは「買い物かご」と「レジ袋」を前提として、防犯など店の運営をやってきたのだから、マイバックに代えれば予期せぬ歪(ひず)みが生じるのは当然だろう。
つまり世の中というやつは、軟弱な土地に建つ家のようなもので、ちょこっとでも改築しようとするとバランスが崩れ、家はグラリと傾いてしまうのである。
「軟弱な土地」とは、矛盾のことだ。
たとえば「CO2の排出」と「経済成長」、あるいは「たくさん稼ぎたい」と「楽をしたい」など、世の中の仕組みも、私たちの精神構造も、矛盾の上に微妙なバランスを取りつつ成り立っている。
だから「改革」など、現状を少しでも変えようとすると、バランスを崩すというわけである。
エコも同様だ。
環境にやさしくしようとすれば、これまで成り立っていたバランスが崩れて、プラス面とマイナス面の両方を生じる。
エコは新たなビジネスチャンスである同時に〝非エコ〟で稼いできた企業は既得権を失うことでもある。
すなわち、良くも悪くも、「誰かが笑えば、誰かが泣く」のが世の中なのである。
だから、歳を拾うと保守的になる。
現状が変わればマイナス面が生じることを経験で知っているからだ。
老い先短くなるにしたがい、プラス面を享受するより、マイナス面で苦労するほうを厭(いと)うようになるのは当然だろう。
そんなことを考えつつ、
(自分は保守的になってきただろうか?)
と自問してみるのである。
「マイバック」と「万引き」
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