新しく畑を借りた。
家から自転車で行ける距離だ。
「いまの畑は遠すぎる」
と、86歳の親父がボヤくからである。
これまで借りている畑はクルマで30分。
自転車ではもちろん無理で、私の時間があるときにしか行けない。
行けば半日仕事になるので、私もなかなか時間がとれないでいると、
「近けりゃのう。朝晩、畑の様子を見に行けるんじゃが」
ボソリと言って、私にプレッシャーをかけてくるのである。
これが何とも負担で、
「おい! どこか近いところの畑を借りてこい!」
愚妻に命じ、知人の紹介で、新しい畑を借りたというわけである。
ただし、新しい畑は、いまのところ20坪しか空きがない。
趣味の菜園だから、20坪あればじゅうぶんなのだが、
「ウーン、ちょっと狭いのう」
86歳が渋い返事。
無理を言って借りたというのに、バチ当たりな親父である。
で、今朝。
散歩がてらに、私と愚妻とで、86歳のバチ当たりをつれて新しい畑を見にいった。
と、どうだ。
「おっ、ええじゃないか!」
バチ当たりは喜色を浮かべて、
「ここに大根を植えて、あそこにネギを植えて」
ひとりで大ハシャギ。
その姿を見ていると、
「狭いから、借りるのをやめるかな」
と、イヤ味のひとつも言いたくなったが、ま、いいか。
ただ、それはよしとしても、いま借りている100坪の畑をどうしたものか。
「畑をやりなよ」
と好意で貸してくださっているのだ。
何と言って撤収したものか、私はいまも頭を悩ましているのである。
新たに畑を借りたところが……
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