先夜、お通夜に出仕するため、斎場の駐車場に着いたときのことだ。
シートベルトを外し、降りようとしてひょいと腰を浮かした拍子に、
「痛テテテテ」
左の脇腹から腰にかけて激痛が走った。
20年ほど前、市の体育指導委員をやっていた当時、軽スポーツ大会で痛めた部位である。
あちこち治療に通ったが原因がわからず、それ以来、年に何度か激痛に襲われて難儀しているのだが、よりによって、通夜のお勤めを前に何たること。
しばらくじっとしていてクルマから降りる。
法衣カバンが重く、手に持つと、
「痛テテテテ」
そろり、そろりと歩き、エレベータで2階式場へ。
ご遺族に御挨拶するが、腰を折ろうとすると、
(痛テテテテ)
むろん、声にも顔にも出さない。
導師控室で着替えるが、袴のヒモを結ぶと、
(痛テテテ)
坊さんが「痛テテテ」で難儀していることなど、会葬の方々はもちろんご存じない。
人間、それぞれ事情をかかえながらも、はたからは理解してもらえないのだということを、あらためて思った次第。
それでも頑張ってお勤めを終え、帰宅。
そろり、そろりと玄関を入る私に、
「ちょっと、どうしたのよ」
愚妻が険しい顔。
「いつもの腰痛だ」
「気をつけなくちゃダメじゃないの」
「バカ者、どうやって気をつけるのだ」
「そんなこと、自分で考えなさいよ」
こういうのを一刀両断というのだろう。
私は翌日のご葬儀が心配で、論議しているヒマはない。
シップを何枚も愚妻に貼らせた。
痛みは取れなかったが、何とか無事にお勤めを果たした次第。
それから数日たった今日の昼間、日帰り温泉に出かけ、じっくりと湯船に浸かってきた。
気のせいか、いくぶん楽になったようである。