歳時記

スーパーにお供する

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愚妻をスーパーに送っていった。
いつもだと、買い物が終わるまで私はクルマの中で待機する。
老夫婦が連れだって食糧を買い出すなど、みっともないと思うからだ。

だが、今回は愚妻が脊柱管狭窄症で足を引きずっている。
荷物を持たせるわけにはいくまいと思い、買い物につき合った。

野菜や果物の値段など見たことがないから、
「おっ、安いな」

ミカンの値札を見て言うと、
「ちょっと、どこが安いのよ」
愚妻に怒られた。

そんなこんなで私がカートを押しながら店内を買い物して進んでいくのだが、
愚妻があっちに寄り、こっちに寄り、品物を手にして駕籠に入れたり戻したり。

私はイラつきながらも、この光景を以前見たような記憶がある。
なんだろうと記憶をまさぐると、
(あっ、そうだ。犬だ!)

思い当たった。

以前、犬を飼っているとき散歩に連れて行くと、あっちに寄り、こっちに寄り、片足上げてオシッコでマーキングしていたではないか。
愚妻のスーパー内での行動は、あれと同じなのである。

そう、愚妻は犬なのだ。

可笑しくなってきてケタケタと声を出して笑うと、
「どうかしたの?」
眉根を寄せて、
「ちょっと、人が見てるじゃないの」

なぜ笑ったか説明しようとして思いとどまる。
わざわざ愚妻を怒らせることはないのだ。

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