歳時記

愚妻の目を盗んで執筆

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今日、量販店に買い物に行った。
仕事用の椅子の具合がよくないので、ついでに見ていこうとしたら、
「あら、まだ書くつもりなの?」
愚妻が嫌なことを言うのだ。

過日も、パソコンの寿命について口にすると、
「あら、まだ書くつもりなの?」

首や肩が凝って、湿布を貼るよう命じると、
「ちょっと、原稿なんか書くからよ」

まるで、私がゲームでもやっているかのような口ぶりで非難する。

「バカ者、苦吟しながら書いておるのだ」
「だから、やめなさいって言ってるじゃない」
勝ち誇ったように言う。

実際、愚妻は私の著作物に関心がない。
「あら、売れたのね」
「あら、ちっとも売れないのね」

印税の支払い調書に反応するだけで、一冊も読まないどころか、一ページたりともめくったことがない。
当然、タイトルも関心の外である。

私も何を書いているか話すことはないし、出版されたことも口にしない。
出版社から見本が送られてきて、
「あら、書いたのね」
それで終わり。

出版社から表紙案が何通りか送られてくるが、以前、愚妻に見せたところ、
「どれでもいいんじゃない?」
それ以後、意見を求めたことは皆無なのである。

「あら、まだ書くつもりなの?」
この一言が癪にさわる私は、法務の合間を縫い、愚妻の目を盗むようにして執筆しているのだ。

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