歳時記

「人生をかける」ということ

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仙崖は、江戸時代後期に活躍した「反骨の僧」だ。
日本最古の禅寺・聖福寺(博多)の高僧でありながら、生涯を麻の黒衣で過ごした。
背丈は小さく、自分の顔を称して「猿の日干し」と言って笑っていたそうだが、実際、住職として赴任してきたときは「乞食坊主」と間違われたという。

仙崖の反骨ぶりで痛快なのは、藩主・黒田斉清に楯突いたエピソードだ。
斉清が大切にしていた菊の花を、庭師が誤って折ってしまったときのこと。
切腹を命じられたと伝え聞いた仙崖は夜中、菊の花を全部切り取ったのである。

これに斉清が激怒すると、
「菊の花と人の命とどちらが大切か!」
と一喝。
斉清は大いに恥じ入ったという。

出場選手らを中傷する投稿がSNSで相次いでいる。
中傷投稿は論外として、私が気になったのは、
「選手は人生をかけて戦っている」
といった選手自身のコメントが散見されることだ。

競技に人生をかけるとは、どういうことなんだろう。
「メダルと人生とどっちが大切か!」
仙崖ならそう一喝するのではないか。

競技だけでなく、仕事を、日々を、もっともっと楽しむべきではないか。
いや、楽しもうとするべきではないか。

人生の本質とは何か。
中傷とは別次元で、そんなことを思うのだ。

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