歳時記

銀行のキャッシュカード

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外食して会計のとき、
「PayPayで」

愚妻がスマホをかざしてから、得意そうに私のほうを見る。
私はこういうのが苦手で、スマホには一切そんなアプリは入っていないし、やり方も知らない。

スーパーでの自動支払い(というのかどうか知らないが)もチンプンカンプンで、愚妻にバカにされるのだ。

なにしろ初めて銀行に預金したのが30歳を過ぎてからである。
キャッシュカードというものを持ってみたくて、若いコに銀行まで一緒に行ってもらい、手持ちのヘソクリ80万円を預けてキャッシュカードをつくった。

若いコにキャッシュカードで入金と出金のやり方を教えてもらい、これがもう嬉しくて嬉しくて、用もないのに何度も出し入れである。

そして、誰彼となく、
「キャッシュカードをつくってねぇ」

自慢したが、みなさん一様に、
(こいつ、頭がおかしいんじゃないか?)
という顔をしたが、私にしてみれば銀行に預金したこと、キャッシュカードを持ったことがそれほど嬉しかったのだ。

で、年配の知人にそのことを言うと、
「へぇ、銀行にねぇ。いくら預けたの?」
「80万です」
「あっ、そ。ちょっと貸してよ」
「いいっスよ」

それから半年後、知人は自死した。

知人は編集プロダクションをやっていたが、経営は火の車だったことを知る。

通夜ぶるまいの席で、みなさん、故人の思い出に花を咲かせていたが、私は故人を悼みつつも80万円が消えたことがガッカリであった。
40年前の80万円は、30歳そこそこの私には大金だったのだ。

ヘソクリなので愚妻には黙っていたが、後年になってこのことを話すと、
「ほら、ご覧なさい。私に隠れてやると、ろくなことないんだから」

80万円が消えたことよりも、自分に内緒であったことに文句を言うのだ。
なんだか論点が違うような気がしたが、人それぞれ思うことが違うのだと思ったものだ。

スマホ決済に私が躊躇するのは、キャッシュカードに浮かれた苦い経験があるからなのである。

と、ここまで書いて、肩甲骨と肩の痛みが激痛に変わった。

痛みも激しいと吐き気がしてくる。
昨日、法事の帰りに激痛で気分が悪くなり、クルマの運転に難儀した。
もう少し書くつもりでいたが、本日のブログはここで終了。

ちなみに、今朝も愚妻を日帰り温泉に送った。
いまごろ湯船につかって、風呂友たちとペチャクチャやっているのだろう。
3時間後に迎えに行かなくてはならない。
資料を読もうと思っていたが、激痛で無理。
横になって、迎えに備えるのだ。

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