愚妻が近くのスーパーに買い物に行って帰ってきた。
ダウンコートを着込み、帽子に眼鏡に、顔面をすっぽり覆うマスク。
「ワッ!」
異様な風体に、居間にいた私はビックリした。
「なんじゃ、その格好は」
「コロナの完全防備よ」
「そうまでして買い物に行かなくてもよいではないか」
そう言ったところが、
「あれ食べたい、これ食べたいって文句ばかり言ってるのは誰なのよ!」
異様な風体が怒った。
外出自粛も一週間。
用事はあるのだが、「要・急」かといえばそうでもない。
で、自宅に籠もり、普段は見ることのないテレビを観たりする。
昨夜はエベレス登攀をやっていた。
「雪山に登って面白いのか」
「面白いから登るんでしょ。でなきゃ、行かないわよ」
「それもそうだ」
「ヒマなのね」
登山者には大変申しわけないが、夫婦してケチをつけながら、それでも興味津々で観るところが、年寄りということなのだろう。
今週も日帰り温泉はパスすると、愚妻は言っている。
コロナの感染リスクを心配しているように見えて、実は楽しんでいるのではないか。
いつ購入したのか、新しいマスクをつけている。
昨日は、マスクの中に装着するものが通販で届き、愚妻が嬉々としている。
コロナ禍も、そんな楽しみ方があるのだ。