階下で、にぎやかな声がする。
近所に住む孫二人が遊びに来ているのだ。
しかし、私の部屋には絶対に入ってこない。
私が自室にいるときは仕事をしているときなので、絶対に邪魔してはいけないと、娘が厳しく躾(しつ)けているからである。
だが、階下におりて顔を見せると、孫たちは〝解禁〟と受け取り、
「館長の部屋へ行こう!」
ドドドッと二階へ上がって行って、ベッドの上で跳んだり跳ねたりで、居座ってしまう。
ちなみに、孫たちは私のことを「館長」と呼んでいるのだが、それはともかく、仕事をしているときは、うっかり階下に降りては行けないというわけだ。
ところが、今朝は腹が減って、どうにもならない。
朝食といっても、蜂蜜をつけたクラッカー数枚にヨーグルトだから、そっと降りていけば、居間にいる孫たちに気づかれずにすむのではないか。
それで足音を忍ばせ、階下に降りたところで、
「ちょっと、ヨーグルトないわよ!」
アホな愚妻が大声で告げた。
「あッ、館長!」
孫たちが喜色の声を上げ、
「よし、二階だ!」
ドドドッと階段を二階へ走る。
おかげで原稿は中断。
孫にいい顔をしたいがために、私はニコニコ笑顔で鷹揚に構えつつ、腹のなかで愚妻に毒づくのだ。
孫の来訪と仕事
投稿日: