日日是耕日

俗にありて、煩悩を耕す365日

歳時記

辛抱は、半(なか)ばをもって完遂とする

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 今月15日〆切の単行本があるのだが、原稿は半分を過ぎたあたりから快調になり、3分の2を過ぎると急速に筆が早くなる。
 これは毎度、経験することだ。
 理由は簡単。
「あと何ページ」
 と、脱稿まで〝引き算〟で考えるようになるからだ。
 筆が早くなるというより、「早く感じる」のである。
 2年前、坊さんになるとき、得度習礼で11日間、本願寺の西山別院にカンヅメになったときも、
「今日で二日、今日で三日……」
 と〝足し算〟で辛抱しているときは遅々として日は進まず、暗澹たる気持ちになったが、中日を過ぎると、あれよあれよで日にちが過ぎていった。
 どんな辛いことも、結局、「総量の半分」を耐えさえすれば、あとはスイスイということなのである。
「3ケ月の入院」
 と言われるとウンザリするし、
「30年の住宅ローン」
 となれば気が遠くなるが、実質はその半分の辛抱なのである。
 人生だって〝引き算〟で考える年齢になれば、歳月は早いものだ。
 週刊誌記者として社会生活をスタートし、少なからぬ波乱の人生ではあったが、過ぎてしまえばあっけなく、レースが終わったあとハズレ馬券を手にしているような気分である。
 まさに、たかが人生、されど人生。
 どうせハズレ馬券であるなら、馬という〝人生〟がゴールに入るまで、思い切りレースを楽しむがよかろう。
 レースを楽しまずして、ハズレ馬券にガッカリするのは、実に愚かなことだと、私は思うのである。

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