日日是耕日

俗にありて、煩悩を耕す365日

歳時記

草津温泉で雪にたたられる

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 1泊というあわただしさで、昨朝、女房と草津温泉へ出かけた。
 習慣とは恐ろしいもので、数時間後には温泉に浸かるというのに、朝起きると、すぐ女房が、
「風呂、沸いてるわよ」
「ウム」
 ザブン、と湯船に浸かってから、
(ありゃ、このあと温泉じゃないか)
 げに習慣とは恐ろしいものである。
 草津温泉でのんびりし、翌朝――つまり今朝、起きてビックリ。
 雪が積もっているではないか。
「おい、ヤバイ!」
 女房を起こすと、
「大丈夫よ。チェーン持ってきてるから」
 大丈夫ではないのだ。
 私はチェーンをつけた経験が一度もない。
 つけた経験どころか、このチェーンは気まぐれで買っただけで、収納ケースを開けたことすらないのだ。
(ヤバイなァ)
 と思いつつフロントで聞けば、有料でチェーンを装着してくれる会社があるとか。
 すぐさま電話して来てもらい、無事、装着。
「エー、お客さま、チェーンの外し方はですね……」
 親切なサービスマンの兄ちゃんが説明するのを遮って、
「ガソリンスタンドで外してくれないの?」
「有料でしたらやってくれますが、このチェーンは簡単に外せますから、ご自分で……」
「いや、いいって、やってもらうから」
 こうして帰途についたのだが、運転しつつ、私は反省した。
(何事も〝人だのみ〟にしてはいけないのではないか?)
 それが自分の悪いところだ、としっかり反省し、
(よし、自分でできることは自分でやろう)
 そう決心し、チェーンは自分で外すことにしたのである。
 で、山を下り、空き地でチェーンを外そうとしたところが、
(ヤバ!)
 うまくいかないのである。
「もう、ホントにダメなんだから! ちょっと、どいて」
 女房と代わり、
「ちょっと、クルマ、少し前に動かして!」
 そんなこんなで無事、チェーンを外すことができたのである。
「ナルホド、やってみれば案外、簡単なんだな」
「その簡単なことが、どうしてあなたにはできないのよ」
 女房の冷ややかな視線を浴びつつ、私は考える。
 自給自足に自主防衛……。
 論議はにぎやかだが、
(いざ、自前でやるとなると大変なんだろうな)
 チェーンに端を発し、思いは天下国家へ飛翔していくのである。

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