今朝、愚妻の前で、私がペコンと頭を下げて見せた。
「どうしたの?」
「実るほど、頭(こうべ)を垂れる稲穂かな」
と、私は説明した。
思うところあって、謙虚に生きようと思い、愚妻に態度で示したのである。
ところが、愚妻はそのことには関心を払わず、
「ちょっと、頭の下げ方が曲がっているわよ。こうやってやるのよ」
と見本を見せた。
「それでは、ゆっくりすぎるではないか」
「いいのよ、これで。ペコンとやったらヘンでしょう」
「バカ者。わしの稲穂はたわわに実っているから、下げるときにスピードがついてしまうのだ」
「じゃ、私の稲穂は実りが少ないとでも言うの? ちょっと、ハッキリ言いなさいよ」
こういうのを「水を差す」と言うのだ。
せっかく謙虚に生きようと思っているのに、話はくだらない方向へと転がって行く。
私が謙虚とは無縁の人生を歩んでいるのは、愚妻のせいに違いないと、このときハタと気づいたのである。