日日是耕日

俗にありて、煩悩を耕す365日

歳時記

自然公園を散策

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 伊豆の下田へ3泊4日で出かけた。
 数年前に訪れた修善寺の自然公園『虹の里』が気に入っているので、途中で立ち寄った。
 うろうろと歩き回り、ひょいと前方の歩道を見やると、何やら長いモノ。
(あっ、ヘビだ)
 長い(と言うのかどうか)、優に1メートル以上はあるヘビが、ノロノロと歩道を横断して池に向かっているではないか。
 愚妻はヘビが大嫌い。
 だが、行く手にヘビがいる以上、黙っているわけにいかない。
 私は愚妻を脅かさぬよう、パニックにならないよう、声を荒げず、
「おい、あれ」
 前方にアゴをしゃくった。
 ところが愚妻は、
「ン?」
 ヘビを目にしてもキョトンとしている。
 愚かな女だ。
 春の公園にはヘビがいるという認識が欠如しているのだ。
 このマヌケさ加減に腹が立ち、
「ヘビだ!」
 指で示し、語気を強めて言ったとたん、
「ウワーッ!」
 野獣のような叫び声をあげ、モーレツな力で私の腕にしがみついてきたので、これにはこっちがアワを食い、
「ウワーッ!」
 私も思わず叫んだ次第。
 だが、愚妻の立ち直りは早い。
「ヘビは金運の象徴でしょう? いいかもね」
 その場を離れながら言う。
「よし。じゃ、もう1度、見に行こう」
「いやよ」
「金運だぞ」
「絶対にいや」
「1千万やると言われたら見に行くか?」
「1千万じゃねぇ」
「1億ならどうだ」
「行こうかしら」
 せっかくの自然公園も、愚妻と歩くと四季に心を遊ばせるどころか、俗な話しになってしまうのだ。
 

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