日日是耕日

俗にありて、煩悩を耕す365日

歳時記

大人と子供は同等?

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 道場は暖房を効かせているので、椅子に座って稽古を見ているうちにウトウトとしてくる。
「あッ! 館長が寝ている!」
 と幼児ならアッケラカンと大きな声を出すが、小学生ともなれば〝気づかい〟をしてくれるのだろう。
 小声でヒソヒソと、
「館長が寝ているよ」
 しかし、自分を批難する声は、どんなに小さくても聞こえてくるものである。
 中学校の柔剣道場を借りて、大人の古武道と子供の空手を稽古をしているのだが、ここは寒い。
 だから、子供たちが準備運動をしているときは、私はベンチウォーマーを着て、毛糸の帽子に手袋で椅子に座って見ている。
 すると小学生の女子たちが、
「館長、ズルイ!」
 と批難する。
 だから、私は言うのだ。
「キミたちが風邪を引いても稽古に差し障りがないが、館長が風邪を引いたら困るだろう。館長はキミたちのために、わざわざ厚着をしておるのだ」
 子供たちは反論しようと何か言いかけるが、言葉にならない。
 当然だろう。
 私の詭弁に叶うはずがないのだ。
 それにしても、「大人」に対して「ズルイ」と、何のためらいもなく言える時代なのだ。
 子供と大人は同等。
 彼らはこのことを信じて疑わない。
 本当に、それでいいのだろうか。
 気になるのだ。

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