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俗にありて、煩悩を耕す365日

歳時記

鎮痛剤のアレルギー検査

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 今日の午後、大学病院へ薬疹(鎮痛剤アレルギー)の診察に行ってきた。
 鎮痛剤を肌に貼り付け、反応を見るパッチテストの予定であったが、
「先日の血液検査で、かなりハッキリ出ていますね」
 と、陽性反応が出ている〝鎮痛系統〟について説明してくれ、
「パッチテストをするか、あるいは、とりあえず血液反応の結果でよしとするか、どっちにしますか」
 ということだった。
 私は「とりあえず」という言葉が大好きなので、とりあえずパッチテストは中止としたが、このときふと、ある考えがよぎり、そのことを医者に問うた。
「先生、これまで鎮痛剤で薬疹が出なかった私が、あるとき突然に出るようになったわけですね。ということは、逆も考えられるのではないでしょうか。つまり、あるとき突然、薬疹が出なくなるとか」
 医者はジロリと私の顔を見た。
(この患者、屁理屈を言ってやがる)
 とでも思っているのだろう。
「まっ、鎮痛剤を何十年も使わなければ、身体のほうがアレルギー反応を忘れるということはあるでしょうな」
 冷ややかな表情で言った。
(なるほど)
 と私は思いつつも、
「しかし先生、何十年とおっしゃいますが、私はそこまで生きてられないじゃないですか」
 ジョークのつもりで言ったが、医者の立場としては、いわく言い難しで、
「ま、それは」
 とかなんとか語尾を濁し、ムニャムニャと返事をした。
 医者とのやりとりを、廊下で待つ愚妻に教えたところが、
「ちょっと、あんまりヘンなこと言わないでよ。恥をかくのは、あなただけじゃないんだから」
 と、私をニラんだ。
 愚妻はバチ当たりゆえ、私が言わんとする真意が汲み取れないのだ。
 その真意とは、還暦を過ぎれば、もはや「何十年」という言葉が意味をなさないということなのである。
 今年もあと二週間余り。
 光陰は矢の如く過ぎ去っていくのだ。

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