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歳時記

橋下徹氏に見る「ハリネズミの自己演出術」

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大阪府知事・橋下徹氏の言動を見ていて、唐突に「ハリネズミ」をイメージした。
 ハリネズミは、攻めてくる相手に対しては猛然と針を逆立てて抵抗するが、そうでない相手に対しては――交尾するときのように――針を収めて寄り添う。
 たとえば、3日に告示された山口県岩国市の市長選。
「憲法を勉強して」
 と、橋下氏は、前市長で候補者の井原氏を批判。
 これに対して、井原氏や学者から、
「橋下さんこそ不勉強」
 と指摘されるや、福岡で行われたフォーラムで、
「机の上の憲法論しか知らない憲法学者に、とやかく言われたくない」
 と猛反発した。
 岩国市長選は米空母艦載機移転が争点になっているが、本論と関係ないから割愛(みなさんでニュースをチェックしてください)。
 私の興味を引いたのは、記事の次の下り。
《(橋下氏は)このフォーラムの開会前、主催者で全国知事会長の麻生渡・福岡県知事と初対面。先輩格の麻生氏に対し「先を行かれる福岡県の子育て支援施策を勉強したい」「企業誘致のポイントは?」と述べるなど、謙虚な姿勢を見せていた。》
 あるいは1月末の記事。
《大阪府知事選で初当選した橋下徹氏が31日、府庁の知事室を訪れ、初めて太田房江知事にあいさつした。太田氏が「これから一府民として橋下府政を応援していく」とエールをおくると、橋下氏も「家が近くなので、悩んだときはすぐにうかがってもいいですか」とこたえた。》
 この態度の使い分けが、ハリネズミを連想させ、これを私は「ハリネズミの自己演出術」と呼ぶ。
 東京都知事の石原慎太郎氏、あるいは現役時代のハマコー氏が先輩格になるか。
 周知のように、批判に対しては徹底して針を逆立てて突進していくが、交尾相手となれば一転する。
 よく言えば、
「味方にすれば心強いが、敵に回すと厄介だ」
 という自己演出術。
 悪く言えば、ヤクザ式。
「ワシからは仕掛けへん。せやけど、米びつに手ぇ突っ込まれたら、黙ってへんで」
 八方丸く治めようと腐心するのではなく、「敵」か「味方」を峻別し、味方を増やしつつ、敵に対しては徹底的に追い込んでいく。
 すると、どうなるか。
「あいつにケチつけると、あとが面倒や」
 ということになり、これが力となっていくのである。
 ハリネズミを批判しているのではない。
 演出術の一つとして、「この方法もある」と言っているのだ。
 ただし、ハリネズミより一枚上手なのがキツネ。
 キツネがハリネズミを補食するときは、ハリネズミを水溜まりに落とし、泳ごうとして身体を伸ばしたところを、ガブリ。やわらかい腹部に咬みつくそうだ。
「ハリネズミの自己演出」をやるなら、ここに気をつけること。
 ついでながら、政界はキツネとタヌキの生息地。
 水溜まりに落とされぬよう、橋下氏はくれぐれもご注意を。
 

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