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俗にありて、煩悩を耕す365日

歳時記

リスクを承知で〝大風呂敷〟を広げてみたまえ

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 大風呂敷――胸躍る言葉ではないか。
 男たる者、大風呂敷のひとつも広げられないでどうする。
「オレの大風呂敷で、地球を包んでやる」――といった気構えは欲しいものである。
 だが、注意すべきは、「ハッタリ」と「気構え」は違うということ。
 何が違うのか。
 本気でやろうと胆をくくるのが気構えで、出ルゾ、出ルゾで一向に出ない真夏の幽霊が、ハッタリ。「有言実行」と「有言不実行」の違いと言ってもいいだろう。
 大風呂敷で大事なことは、包み切ることだ。
 そうすれば、
「あいつは、たいしたものだ」
 と見直される。
 これまでが悪評フンプンであっても、オセロゲームのごとく評価は大逆転である。
 反対に、不幸にして、ただ広げて見せただけで終わると、これはハッタリになってしまう。
「しょうがねえな、あの野郎は」
 と信用失墜である。
 そういう意味で、大風呂敷は、まさに諸刃の剣なのである。
 だから、大風呂敷を広げるときは、
「やり切れるのか」
 という見極めがまず、大事になってくる。
 掛け値なしで、自分の実力を推し量るのだ。
 そして、
(やれる)
 と判断したら、目一杯、風呂敷を広げればいい。
「ホラ吹いてやがる」
「できもしねえくせに」
「口は重宝なもんだ」
 悪口、悪態、誹謗中傷は大歓迎。うまくやったときは、何倍もの賞賛になって帰ってくるからである。
 だからこそ、やり切れるかどうか、自分の実力を知ることが不可欠になる。
 ありのままの自分を知ること――これを《如実知自(にょじつちじ)》と言う。経典の中に出でくる文言で、ビジネスマンで言えば、まさに「自分の実力を知れ」ということになるが、ポイントは「ありのまま」というところにある。
 なぜなら、自分に甘く、他人に辛いのが人間で、自分をありのままに評価するのは至難の業であるからだ。
 ウィークポイントに対しては、眼をつむるか、
(でもさ)
 と、いいように解釈する。
 反対に長所は、
(まっ、オレの実力からすればチョロイもんさ)
 と、拡大解釈である。
 自分の実力を冷静に評価せずして大風呂敷を広げれば、どうなるか。
 包めなくなって恥をかく。
 ハッタリだと言われる。
 ホラ吹きだと嘲笑される。
 そのことを肝に銘じ、リスクを承知してなお、目一杯に大風呂敷を広げて見せるのが男だと、私は思うのである。

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