日日是耕日

俗にありて、煩悩を耕す365日

歳時記

節約という「道楽」

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 東京電力の電力販売(4月)が13パーセント減だそうだが、これを、
「最大の落ち込み」
 とメディアが書いていた。
「落ち込み」という言葉にはネガティブなイメージがあるので、
「東電にとってよくなかった」
 と読める。
 だが、電力消費の落ち込みは、計画停電と節電によるものであるし、夏に向けて、さらなる節電を国も東電も呼びかけている。
「電気を使わないでください」
 という呼びかけに対する結果が13パーセント減なのだ。
 ならば、「最大の落ち込み」などと書かず、
「最大の節約効果」
 とポジティブに書くべきだろう。
 メディアはいったい何を考えているのか。
「そうは思わんか」
 と愚妻に同意を求めると、
「あら、うちなんか、電気代が20パーセントも安くなっているわよ」
 と、得意そうに鼻をうごめかした。
 なるほど、言われてみれば、わが家の節電は徹底している。
 玄関も、廊下も、階段も一切電気をつけないのだ。
 そのかわり、センサーで関知して光る電池式のライトが、いたるところにセットしてある。
 玄関に入ると、ピカッ。
 靴を脱いで廊下に上がると、ピカッ。
 二階に行こうと、階段に足をかけるとピカッ。
 そして階段を上がっていくにつれて、ピカッ、ピカッ、ピカッとライトが〝先導〟するのである。
「おい」
「なによ」
「節電で電気代が2割減もいいが、そのためにピカッ、ピカッをこんなに買ったのでは、費用がかさんで、かえって高くつくのではないか」
 私は、ごく常識的なことを口にしただけであるが、
「何よ、いつもケチばかりつけて」
 と、むくれてしまった。
 だが、考えてみれば、歩くたびにピカッ、ピカッ、ピカッも楽しいではないか。
 費用対効果はともかくとして、
(この夏は、節電をゲーム感覚で楽しむことにしよう)
 と思った次第。
 歳を取っての道楽は身の破滅と言うが、還暦にして初めて知った「節約の楽しさ」に、私はハマりつつあるのだ。

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