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俗にありて、煩悩を耕す365日

歳時記

子供の名前を、ひっくり返して呼んでみた

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 幼児クラスの一人の名前を、ひっくり返して呼んでみた。
 夢人(ゆうと)という名前を
「トーユー」
 と呼んだのだ。
 すると
「そんな呼び方するな!」
 と、ムキになって怒ったので、試しに何人か他の子供たちの名前をひっくり返して呼んでみた。
 正梧は「ゴーショー」、翔也は「ヤーショー」、紗里奈は「リサナ」……。
 すると、みんなが、
「ボクは? 私は?」
 と、せがむので、一人ひとり名前をひっくり返して呼んでやると、キャッキャと言って喜んでいる。むくれていたはずの「トーユー」までもが、ニコニコ笑顔になっている。
「トーユー」という呼び方がイヤだったのではなく、自分だけが特別な言い方をされたことが気にいらなかったということなのだ。
 そして、みんなの名前をひっくり返して呼ぶと、今度はフツーに呼ばれることが〝特別〟となり、仲間はずれにされたような気分になってしまう。
 やんちゃなはずの子供たちが、「みんなと同じであること」に安心感をおぼえるのだ。
 このことを、私たちはどう考えたらいいのだろうか。
 いまの世のなか、横断歩道でさえ、みんなで渡れば赤信号でも平気なのだ。
 私もそうであり、だからこそ、みんなと同じであることに安心感を抱く自分に、私は危惧を覚える。
 理由はわからない。
 ただ、内なる声が、
「異端であれ」
 と、私に言うのだ。
 私は「異端」でありたいと願う。

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