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歳時記

自民党大敗の真因を考える

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 自民党が大敗した。
 原因の本質は、年金問題でも、閣僚の相次ぐ失言でもない。
 安倍総理に対する失望感――すなわち、リーダーシップの欠如に対して、有権者は嫌気がさしたものと、私は思っている。
 松岡、柳沢、久間、赤城――と相次ぐ失言問題に対し、安部総理はなぜ断固とした態度を取れなかったか。これが、小泉前首相とくらべ、優柔不断で、気弱で、お坊ちゃんという「頼りなさ」につながり、
「この男じゃ、しょうがねぇよ」
 となったものと私は見ている。
 しかも、そこを自民党は理解できず、
「安倍を取るか、小沢を取るか」
 というキャッチコピーを掲げた。
《剛腕・小沢》に《軟弱・安倍》を対比させるなど、愚かの極みであろう。
《泣いて馬謖(ばしょく)を斬る》
 という諺がある。
 周知のように、三国時代の武将である馬謖が、諸葛亮の指示に背いた作戦で大敗したときのこと。諸葛亮は、愛弟子であったにもかかわらず、「軍律の遵守が最優先」として馬謖を処刑した。
 この故事から、《泣いて馬謖を斬る》とは、
「どんなに優秀な者であっても、私情で規律を曲げて責任を不問にすることがあってはいけない」
 という意味で使われる。
 諸葛亮は、愛弟子でさえ、涙を呑んで処刑したのだ。
 
 いわんや、間抜けな失言をして内閣を揺るがせた閣僚など、安倍総理はなにゆえ庇ったのか。
 松岡問題のとき、あるいは久間元防相がイラク戦争をノーテンキに批判したとき、瞬時に罷免すべきだった。
 視点を変えれば、閣僚の失言は、お坊ちゃんと見られた安倍首相がイメージを払拭する千載一遇のチャンスでもあった。
 リーダーは、愛される以上に恐れられなければならない――これが組織の鉄則なのである。
 ただ、安倍総理にチャンスはまだ残っている。
 それは、選挙大敗の原因が、総理の失政によるものでなく、また安倍総理の人間性が嫌われたわけではないことだ。
 大敗の真因は、
「人柄は悪くないんだけど、ちょっと頼りないな」
 という、失望感にある。
 もっと言えば、
「おいおい、期待しているんだから、もっとしっかりしろよ」
 という腹立たしさの結果と言ってもいいだろう。
 ヨイショするわけではないが、そう思わせるところに安倍総理の、お坊ちゃんゆえの〝人徳〟があると私は思うのである。
 参院戦の大敗を教訓として、彼は「強い男」になれるか。
 国政とは別の視点で、私は安部総理がどう変わっていくか、興味をもって見ているのだ。

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