日日是耕日

俗にありて、煩悩を耕す365日

歳時記

嫌われるなら、青大将よりコブラになれ

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 今日は暑い一日になるという予報だったので、早朝5時前に起床して畑へ行った。
 畑に行くメンバーはいつも三人だ。
 私のオヤジと、カミさんと、そして私だ。役割がそれぞれ決まっていて、畑の知識があるオヤジが種を蒔き、苗を植え、肥料をやる。カミさんは当然、収穫係りで、しっかとカゴを用意し、「あっ、インゲンができてる」「あっ、ネギが――」と、嬉しそうな声をあげている。
 私は、何の能力もないので、ひたすら草むしり。
 オヤジとカミさんに背を向けてしゃがみ込み、ただ黙々と草をむしるばかりなので、いつまでたっても畑の知識が身につかない。
「それで、畑は何を植えてるんだい?」
 友人に訊かれて、
「ええっと、キューリとナスとサニーレタスと落花生と……、あと何だっけな」
「それでよく畑をやってるって言えるな」
 友人はあきれるが、私の畑仕事は草むしりなのだから、しょうがないのである。
 で、今朝。
 畑を貸してくださっているS氏が、ミョウガを持って来てくださった。
「ミョウガを採っていたら、マムシがいたんだ」
 S氏は愉快そうに言うが、笑いごとではない。
「気をつけてくださいよ」
「なあに、大丈夫さ」
 S氏は豪快に笑い飛ばしたが、このときふと思った。
(マムシでなく、ハブだったらどうだろう)
 
 私は毎月、沖縄に古武道の稽古に行っているので、ハブの恐ろしさについては承知している。
 だから、マムシでなくハブだったら、Sさんも笑ってはいられなかったろう。
 さらに、ハブでなく、コブラだったら、どうか。エラを張り、鎌首をもたげていたら……。
 このとき思ったのである。
 蛇は嫌われるが、ハブやコブラになると、今度は恐れられる。
 人間も同じで、青大将や、せいぜいマムシでいるから嫌われ、みんなに石もて追われるのだ。ならば、いっそのこと〝コブラ人間〟になればいい。恐怖されれば、みんなは足をすくませる。
 もはや嫌われることはないのだ。

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