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俗にありて、煩悩を耕す365日

歳時記

伸びる人間は「返事」でわかる

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 伸びる人間と、そうでない人間を見抜く方法は、「返事」にある。
 これが私の人物鑑定法で、「でも」と「しかし」という否定の返事をする人間は、まず伸びないと思ってよい。
 たとえば、
「この原稿、書き出しがちょっと重いな」
 私が若い子に注意する。
「そうかもしれませんけど、しかしこの場合、仕方ないと思うんですが」
 へりくだってはいるが、この場合の「しかし」は、
(俺は正しい)
 ということを言外に主張しているのだ。
 あるいは、
「だめじゃないか、遅れちゃ」
 叱ると、
「すみません。でも、いつもの快速電車が今日は運休になっていたんです」
 あやまってはいるが、この場合の「でも」は、
(俺は悪くない、悪いのは電車だ)
 と、電車に責任を転嫁しているのだ。
 すなわち、〝でも〟と〝しかし〟は、「自分が正しい」という前提に立って発する言葉なのである。
 だから、伸びない。
「伸びる」とは、注意され、それを謙虚に受け止め、克服した結果を言うのだ。「自分が正しい」と思い込んでいる限り、成長がないのは自明の理なのである。
 返事は常に「はい」――。注意や批判を謙虚に受け止め、吟味し、しかるのち対処する。「見どころがある」とは、こういう若者のことを言うのだ。

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